コラム

離婚と任意売却、どちらを先にするべきか?オーバーローン時の対処法も解説

離婚を考えているとき、共有している不動産をどうするかは深く考えなければならない課題の一つです。

特に、ローン返済が困難になった場合に考えられる手段である「任意売却」は、離婚のタイミングによってそのメリット・デメリットが変わってきます。

そこで本章では、離婚と任意売却のタイミングについて考えてみましょう。

それぞれのタイミングでのメリット・デメリットを理解し、自身の状況に最も適した選択をするための参考にしてください。

 

離婚と任意売却、どちらを先にすべき?

離婚と任意売却、これら二つの大きなライフイベントのどちらを先にすべきかという問いですが、基本的に「離婚前に任意売却」を行うべきです。

その理由は、離婚後にしばしば発生する連絡の困難さや新たな生活への移行による混乱、そして連帯債務問題を未然に防ぐことができるためです。

しかし、一概に離婚前の任意売却を推奨するわけではありません。

この選択をするためには、適切な売却価格を設定し、売却先を見つけるための時間や労力、そして信用情報への影響など、考慮すべきデメリットも存在します。

以下の章では、「離婚前に任意売却をするメリット」「離婚前に任意売却をするデメリット」について詳しく解説します。

これらの情報を踏まえて、自身の状況に最適な選択をしていただければと思います。

 

離婚前に任意売却をする場合のメリット

離婚前に任意売却をすることのメリットは、主に以下の三つに分けられます。

まず一つ目として、夫婦間の連絡がスムーズに行えるという点が挙げられます。

離婚後は新たな生活への移行や心の整理のため、双方が連絡を避ける傾向にあります。

それに比べ、離婚前ならばまだ共通の課題を共有している状況下にあるため、任意売却に必要な相談や調整がスムーズに行えます。

二つ目のメリットは、離婚後に発生し得る連帯債務の問題を未然に防ぐことができる点です。

離婚後に任意売却を行うと、元配偶者との間で連帯債務の問題が発生する可能性があります。

しかし、離婚前に任意売却を行うことで、このような問題を事前に解決することができます。

三つ目のメリットは、夫婦間での財産分与をスムーズに行えることです。

離婚前に不動産を売却し、その売却金を元に財産分与を行うことで、離婚後のトラブルを防ぐことが可能となります。

これらのメリットを考慮に入れると、離婚前に任意売却を行うことが推奨されます。

しかし、デメリットも存在しますので、後続の章で詳しく解説します。

 

離婚前に任意売却をする場合のデメリット

離婚前に任意売却を行う場合、いくつかのデメリットが存在することも理解しておくことが重要です。

一つ目のデメリットは、任意売却と離婚手続きを同時進行させることによる精神的・時間的な負担です。

離婚そのものが精神的ストレスを伴う大きな出来事である一方で、任意売却もまた、不動産の価格設定、買い手の探し、契約手続きなど、多くの手続きを必要とする煩雑なプロセスです。

これら二つの手続きを同時に進行させることは、時間的な負担だけでなく、精神的な負担も大きいでしょう。

二つ目のデメリットは、夫婦間での意見の対立が起きやすい点です。

任意売却には、売却価格や売却先を決めるなど、夫婦で意見を合わせる必要がある事項が多数含まれます。

これらの事項について意見が分かれると、互いの意見を調整することは難しく、場合によっては離婚手続きそのものに影響を及ぼす可能性もあります。

任意売却を行うことの三つ目のデメリットは、信用情報への影響です。

任意売却を選んだ債務者は、住宅ローンを返済していない、いわば金融事故を起こした人として見られます。

これにより、一時的に新たなローンを組むことができなくなる、クレジットカードの更新ができないなど、「ブラックリスト」入りとも言われる状況となります。

任意売却を考慮する段階で既に、住宅ローンの滞納などによる信用情報への「異動情報」が記録されていることが大半で、信用情報に傷がついている可能性が高いという事実を理解しておくことが重要です。

これらのデメリットを充分理解した上で、自身の状況に最も適した選択を行うことが重要です。

 

任意売却の基礎知識

ここで、任意売却についての基本知識を一緒に学びましょう。

選択の理由や適切なケース、避けるべきケースなど、任意売却について理解することは、より賢明な選択を行うために重要です。

 

任意売却とは何か?

任意売却とは、住宅ローン残債が売却額を超える、いわゆるオーバーローン状態である不動産を売却する際に採られる特別な手法です。

通常、住宅ローンが残っている不動産を売却するときは、売却額によりローン残債を一括返済します。

そのため、売却額がローン残債を上回る、アンダーローン状態である場合には、通常の仲介による売却が可能となります。

一方、売却額で返済しきれないローン残債が存在し、その差額を貯金などで補填できない場合には、任意売却という選択肢が必要となります。

これは事実上、住宅ローンの返済が不可能となる、債務不履行の状態を意味します。

そのため、任意売却を行うには、債権者である銀行の同意が必要となり、個人の判断だけで進めることは出来ません。

 

任意売却を選択するべきケース

任意売却を選択すべきケースは、主にオーバーローン状態であり、売却が避けられない状況にある場合です。

「離婚の不動産売却=任意売却」とは限らず、アンダーローン状態であれば離婚後も普通の仲介による売却が可能です。

まずは仲介の査定を受け、その結果住宅ローン残債を補うことができない場合、さらに貯金や親族からの支援を利用しても一括返済が難しい場合には、任意売却を選択します。

また、夫婦間で連帯債務やペアローン、連帯保証人などの金融上の関係が存在する場合、それらは離婚しても自動的には解消されません。

そのため、住宅ローン残債の完済が必要となります。

このようなケースでオーバーローン状態にあり、早期に金融上の関係を解消したい場合にも、任意売却を選択することが適切となります。

なお、離婚時の住宅ローン残債の対処法や不動産売却する際の確認ポイントについては、この記事で詳しく解説しています。

 

任意売却を避けるべきケース

任意売却を避けるべきケースは、主に不動産がアンダーローン(価格が住宅ローンの残債を上回る状態)で売却可能な場合です。

この場合、査定額が住宅ローン残債を上回っており、仲介による売却が選択可能になります。

また、オーバーローン(価格が住宅ローンの残債を下回る状態)でも、離婚後に両者が返済を続けてアンダーローンになるまで売却を待つ合意があれば、任意売却を選択する必要はありません。

これは、住宅価格と住宅ローン残債の動きから理解できます。

住宅価格は、土地価格も含んでいるため、時間が経過しても価格がゼロになることはありません。

それに対して、住宅ローンは返済を続けることでいずれ残債がゼロになることが確定しています。

つまり、オーバーローンは時間とともに解決する可能性がある問題なのです。

これらの事項を考慮し、2人の間でアンダーローンになるまで売却を待つという合意があるのであれば、無理に任意売却を選択する必要はありません。

 

オーバーローンの時に任意売却がオススメの理由

オーバーローンという状況に直面したとき、多くの人々はどう対処すべきか困惑します。

その中で、任意売却は一つの強力な解決策となり得ます。

しかし、なぜオーバーローンの時に任意売却が推奨されるのでしょうか?

この章では、その理由と、任意売却がもたらす結果について詳しく説明していきます。

 

オーバーローンでも売却できるメリット

オーバーローン状態でも売却できるという事実には、大きなメリットがあります。

その一つは、早期の債務解決です。

任意売却により、不動産を販売して返済可能な額を得ることで、住宅ローンの返済負担を軽減することができます。

これにより、経済的なストレスを和らげ、新たな生活のスタートを切る機会を手に入れることが可能となります。

また、任意売却は競売と比較して、住宅の価格をより高く設定できる可能性があります。

その結果、住宅ローンの残債をより多く返済することが可能になります。

さらに、任意売却はプライバシーを保護するメリットもあります。

あなたの個人的な状況を公にせずに、売り出したい不動産を市場に出すことができます。

これにより、経済的に難しい状況に直面していることを周囲に知られることなく、財務状態を大幅に改善することが可能です。

以上のようなメリットから、オーバーローン状態でも任意売却を選択することは、債務問題に対して新たな解決策を提供します。

しかし、任意売却もまた一定の問題を持っているため、具体的な状況に応じた適切な対応が求められます。

 

残債の返済計画も交渉可能な点

任意売却では、残債の返済計画を交渉する余地があります。

これは大きなメリットとなり得ます。

オーバーローンの状態では、不動産の売却代金だけでは全ての借金を返済することはできません。

しかし、任意売却を行った場合、債権者と直接交渉し、返済計画の見直しや返済額の減額などを申し出ることが可能となります。

通常、債権者も借り手の経済状況を考慮し、返済可能な方法を模索することが多いです。

債権者にとっても、債務者が借金を完全に返済できない状況は望ましくありません。

そのため、返済計画の見直しに対して理解を示すことが多くあります。

このような交渉により、借り手は借金の返済による負担を軽減し、生活の立て直しを図ることができます。

任意売却は借り手と債権者双方にとって、理想的な解決策となる可能性があるのです。

 

任意売却を考える前に検討すべきこと

任意売却は、資金的に厳しい状況に立たされた方々にとって、一つの解決策となり得ます。

しかし、この大きな決断をする前に、しっかりと考慮すべき点があります。

特に離婚という人生の大きな変化を経験中のあなたにとって、任意売却の影響は長期的に及ぶものとなります。

そのため、細心の注意と計画が必要となるのです。

この章では、任意売却を選択する前にあなたが考慮しておくべき重要な視点について解説します。

これらの視点を理解し、あなた自身の状況に最も適した選択をするためのヒントにしていただけると幸いです。

 

不動産買取の検討

任意売却を検討する前に、まずは不動産買取の可能性を検討してみましょう。

不動産買取とは、不動産会社が直接あなたの不動産を買い取る方式のことを指します。

この方式は、仲介を通すよりもスピーディーに売却が可能で、売却後のトラブルを避けることができるメリットがあります。

また、買取価格が最初から明確に提示されるため、予測可能な財務計画を立てやすくなります。

これは、離婚という状況下で新たな生活設計を進める上で大きな助けとなる可能性があります。

ただし、不動産買取では、市場価格よりも低い価格で買い取られることが一般的です。

そのため、任意売却と比較して得られる金額が少なくなる可能性もあります。

この点を考慮しながら、あなた自身の状況に合った最適な選択を行うようにしましょう。

 

複数社に査定を依頼することの重要性

また、任意売却を考える前に重要な点として、複数の不動産会社に査定を依頼することが挙げられます。

一つの会社だけから見積もりを取るのではなく、複数の会社に依頼することで、より公正かつ適切な市場価格を把握することができます。

これにより、不動産の適正価格を知り、最良の条件で売却できる可能性が高まります。

さらに、不動産会社によっては任意売却の経験や知識が不十分な場合もあります。

そのため、任意売却を専門としている会社を含めて査定を依頼し、それぞれの会社の提案を比較検討することが有益です。

こうした対応は、最終的にあなたが任意売却を選択した場合でも有効です。

経験豊富な会社を選ぶことで、売却手続きがスムーズに進み、問題が起きた際のサポートも期待できます。

 

まとめ

この記事では、離婚と任意売却について詳しく解説しました。

離婚と任意売却は、それぞれ難しい選択を伴うものですが、これらが同時に発生すると、より複雑な問題が生じる可能性があります。

まず、離婚と任意売却のタイミングや優先順位について説明しました。

基本的には「離婚前に任意売却」を行うことを推奨します。

その理由は、離婚後にしばしば発生する連絡の困難さや新たな生活への移行による混乱、そして連帯債務問題を未然に防ぐことができるからです。

ただし、これは一般的なケースを指し、個々の状況によっては異なる選択をすることもあります。

また、任意売却の基本的な知識と、そのメリットとデメリットも説明しました。

任意売却は一見解決策に見えますが、それにより引き起こすデメリットも存在するため、メリットと比較してそれがあなたにとって最善の選択肢なのかをしっかり検討することが重要です。

さらに、オーバーローンの問題にどう対処すべきか、任意売却を考える前に検討すべきことなどについても触れました。

借金問題に対して新たな解決策を提供する任意売却ですが、不動産買取や複数社による査定など、他の選択肢も考慮することが重要です。

離婚と任意売却は、どちらも複雑で感情的にも困難な選択です。

しかし、適切な知識と理解を持つことで、最善の決定を下すことが可能となります。

この記事があなたの選択をサポートする一助となることを願っています。

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