コラム
台風・豪雨で住宅ローンが払えない?被災後に使える返済支援と任意売却
投稿日:2026/08/31 更新日:2026/08/31
台風や豪雨で自宅が被災し、「住宅ローンが払えない」「修理代と避難先の家賃まで、どう用意すればよいのか」と不安を抱えていませんか。片付けや仕事の立て直しに追われる中で、お金の問題まで一人で整理するのは大変なことです。
被災後の返済難は、ご自身の努力や家計管理だけでは防ぎきれません。物価高で余裕が少ないところへ、住まいの損傷や休業による収入減が重なれば、これまで支払えていた方でも生活が苦しくなることがあります。
住宅ローンは被災しただけではなくなりませんが、返済方法の変更や、条件を満たす場合の債務減免を相談できます。新たな借入れや自宅の売却を急ぐ前に、金融機関への連絡、保険・公的支援の確認、今後の家計の整理を進めましょう。この記事では、一般社団法人任意売却公正協会のFPの立場から、任意売却も含めた選択肢を解説します。
2026年8月29日時点で、金融庁は同年8月27日からの大雨に伴う富山県・石川県への金融上の措置要請を公表しています。ただし、措置の内容や利用条件は災害・金融機関・契約によって異なり、すべての被災者の返済が自動的に止まるわけではありません。参照:金融庁「災害等に対する金融上の措置要請の一覧」。
被災で住宅ローンが払えないとき、まず知っておきたいこと
家に住めなくなったり、建物が失われたりしても、住宅ローンの返済義務がそれだけで消えるわけではありません。住まいの被害と、お金を借りた契約上の債務は別に扱われるためです。大阪市立住まい情報センターも、自宅が全壊した場合でも住宅ローンの債務自体は残ると案内しています。
そこで問題になるのが、以前の住宅ローンを返しながら修理や建替えのために新しく借り入れる「二重ローン」です。新たに借り入れなくても、避難先の家賃と既存ローンが重なる二重負担は起こり得ます。「銀行が貸してくれるか」だけでなく、「生活費を確保しながら返せるか」を確認することが大切です。
支払いが難しいときに相談することは、家を手放すと決めることではありません。返済を続ける方法を探すためにも、次の支払日に不安がある段階で借入先へ連絡してください。資料がすべてそろっていなくても、まず相談し、不足する書類と提出時期を確認しましょう。

生活の安全を確保した後に進める3つの確認
1. 被害を記録し、自治体へ住まいの支援を相談する
避難とご家族の安全を最優先にし、安全が確保できる範囲で被害を写真に残します。家の外側と室内の損傷箇所、浸水の跡などが分かるように記録しておくと、自治体の被害認定や保険金の請求に役立ちます。危険な建物に入ったり、撮影のために避難を遅らせたりする必要はありません。
市区町村には「罹災証明書」の申請方法と、利用できる住まい・生活の支援を確認してください。罹災証明書は住家の被害程度を証明する書類ですが、取得しただけであらゆる支援が受けられるわけではありません。制度ごとに申請、対象条件、期限の確認が必要です。参照:内閣府「住まいが被害を受けたとき」。
2. 借入先に返済猶予や返済方法変更を相談する
金融機関には、被災した日、住まいの被害、収入の変化、次回返済の見通しを伝えます。「今月だけ不足するのか」「復旧まで収入が戻らないのか」「返済額を減らしても継続が難しいのか」によって、確認すべき対応が変わります。
住宅金融支援機構には、被災された方向けに返済金の払込みの据置や返済期間の延長などの制度があります。ただし、機構の直接融資とフラット35では取扱いが異なり、収入や被害の状況などの条件があります。民間銀行の住宅ローンに同じ条件がそのまま適用されるわけではないため、ご自身の契約について借入先に確認してください。
返済を待ってもらうことと、借金そのものを減らしてもらうことは別です。変更後の毎月の返済額だけでなく、返済再開日、利息の扱い、完済時期、総返済額まで確認しましょう。相談しただけで支払いが停止するとは考えず、金融機関と合意した取扱いを確認することが大切です。
3. 火災保険と公的支援を、契約・制度ごとに確認する
火災保険には、台風による風災や豪雨による水災を補償する商品があります。ただし、水災補償の有無、建物・家財のどちらが対象か、免責金額や支払条件は契約ごとに異なります。「火災保険に入っているから浸水被害も全額出る」とは判断せず、保険会社または代理店へ確認してください。
「保険金で無料修理できる」と勧誘されても、その場で契約を決めず、先に加入先へ相談しましょう。保険金の支払額が確定する前に、受け取れるはずの金額を前提として工事や借入れを決めると、資金不足が残るおそれがあります。参照:日本損害保険協会「風水雪災等による損害を補償する損害保険」。
公的支援としては、被害の程度や再建方法などに応じた「被災者生活再建支援金」、自治体による支援、応急的な住まいの確保などを確認します。支援金の給付と災害復興住宅融資のような貸付けは性質が異なります。借りたお金は原則として返済が必要なので、「受け取れるお金」と「返す必要があるお金」を分けて整理してください。
住宅ローンの減免につながる自然災害債務整理ガイドライン
被災によってこれまでの借入れを返せなくなった場合には、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を確認する価値があります。破産などの法的倒産手続によらず、債権者との合意と簡易裁判所の特定調停手続を通じて、債務の全部または一部の減免などを目指す仕組みです。申請すれば必ず免除される制度ではありません。
対象は「家が壊れた人」だけとは限らない
対象となる災害は、東日本大震災、または2015年9月2日以降に災害救助法が適用された自然災害です。ただし、適用市町村の外に住む人でも、その災害の影響を受け、要件を満たせば対象になり得ます。ご自身の住所だけを見て利用できないと決めつけないでください。
自宅の損傷だけでなく、勤務先の被災による失業・給与減少、個人事業の取引先の被災による売上減少なども対象となる可能性があります。一時的に家計が苦しいだけで自動的に利用できるわけではなく、災害の影響で既往債務の返済ができない、または近い将来できなくなることが確実と見込まれることなどが必要です。
資産・収入・負債の適正な開示や、債権者にとっても経済的な合理性があることなどの条件も確認されます。被害の大きさだけでは判断できないため、家計や借入れの全体像を金融機関と専門家に伝えましょう。参照:ガイドライン運営機関「被災された皆さまへ」「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドラインQ&A」。
手続きの入口と専門家の支援
手続きへの着手は、原則として最も多額のローンを借りている金融機関等へ申し出ます。着手について同意が得られた後、地元の弁護士会などを通じて「登録支援専門家」の支援を依頼し、財産や借入れを整理して債務整理の申出を進めます。
正式な債務整理の申出後は、対象債務の返済や督促が一時停止する取扱いになります。その後、調停条項案を作成し、対象となるすべての債権者の同意を得て、簡易裁判所へ特定調停を申し立てます。最初の問い合わせや手続着手の申出だけで返済が止まるわけではないため、担当者と現在の段階を確認してください。
この仕組みの登録支援専門家による手続支援は無料で受けられます。別途依頼する弁護士への報酬や裁判所の申立費用などまで、一律に無料になるわけではありません。また、一定の財産を生活再建のために手元に残せる可能性がありますが、何をいくら残せるかは個別事情によって異なります。「保険金も預金も全部返済に回さなければならない」と決める前に相談しましょう。
二重ローンを避けるため、修理や追加借入れの前に家計を整理する
一日も早く元の暮らしへ戻りたいと思うのは自然なことです。ただ、住宅の復旧と家計の復旧は、同じ速さで進むとは限りません。修理費の見積りが出た段階で、次のお金を一枚の紙にまとめてみてください。
- 今ある借入れ:住宅ローンの残高・月額、車や教育ローン、カードローンの返済額
- 生活に必要なお金:食費、光熱費、医療費、教育費、避難先の家賃など
- 復旧に必要なお金:修理・建替え費、片付け費、仮住まいからの転居費など
- 入金の見通し:当面の手取り収入、支給が決まった保険金・支援金と入金時期
例えば、既存の住宅ローンが月9万円、修理のための新たな返済が月3万円なら、ローンだけで月12万円です。仮住まいの家賃が月6万円かかる期間は、合計月18万円になります。これは実際の相談事例ではなく計算例ですが、生活費を加えても無理なく支払えるかを確かめることが重要です。
災害復興住宅融資は復旧のための選択肢ですが、新しい借入れで以前の住宅ローンが消えるわけではありません。融資を使う場合も、既存の返済を合わせた負担、返済条件変更の終了後、収入回復が遅れた場合まで確認してください。参照:住宅金融支援機構「災害復興住宅融資」。
カードローンで今月分を補うと、その後は元の住宅ローンに追加の返済と利息が重なります。借りること自体を責めるのではなく、収入回復の見通しが立たない段階で借入れを繰り返さず、支援制度と返済方法を先に確認しましょう。住み続ける場合と住み替える場合を比較し、ご家族の生活費が残る計画を考えることが大切です。
被災した自宅の任意売却を検討するタイミング
一般売却で完済できるか、まず確認する
支援や返済方法の変更を確認しても、その家を維持する負担が大きい場合には、売却して住み替える選択肢もあります。売却代金から仲介手数料などの費用を差し引き、必要に応じて用意できる自己資金を加えて住宅ローンを完済できるなら、一般売却を検討できます。
被災後の査定は、被災前に聞いた価格をそのまま使わず、現状で売る場合と、必要な修理をしてから売る場合を比較します。損傷箇所や浸水の事実、復旧工事の記録は仲介業者に伝え、買主への説明内容も確認してください。大きな修理をすれば、その費用を売却額で取り戻せるとは限りません。
完済できないときは、債権者の同意を得る任意売却を検討する
売却代金などで完済できず、返済の継続も難しい場合には、借入先などの債権者と相談し、抵当権を外して売却する「任意売却」を検討します。住宅金融支援機構も、返済継続が困難な場合に残債務を圧縮する選択肢として案内しています。
任意売却と災害債務整理ガイドラインは同じものではありません。任意売却は売却代金を返済に充てる方法であり、ガイドラインは合意に基づく債務整理の仕組みです。売却を伴う整理となる場合もありますが、ガイドラインの一時停止期間中は、通常の生活・事業に伴うものを除き、全対象債権者の同意のない資産処分や新たな借入れが制限されます。独断で売却契約を結ばず、金融機関と弁護士・登録支援専門家へ確認して進めましょう。
任意売却のデメリットと、被災物件での注意点
任意売却は所有者の希望だけでは進められません。物件全体を通常の売買で売る場合の共有者の同意に加え、抵当権者や差押債権者など、権利の解除に関わる関係者との調整と必要な同意が欠かせません。連帯保証人がいる場合も、その責任や同意の取扱いを金融機関に確認する必要があります。
- 買い手が見つからない、または債権者が売却条件に同意しない場合、最終的に競売へ進むリスクがあります。
- 売却代金で返しきれなかった債務は、自動的には免除されません。残債の返済方法や別の債務整理の必要性も確認します。
- 被害の程度、修理費、土地・建物の状態によって売却条件は変わり、希望する価格や時期での売却は保証されません。
- 引越し先、転居費、売却後の生活費まで含めた準備が必要です。売却すればその家に住み続けられるとは限りません。
住まいを売るかどうかだけを急いで決めるのではなく、「手続き後にどの債務が残り、どこで、いくらの生活費で暮らすか」まで見通しておきましょう。参照:住宅金融支援機構「融資住宅等の任意売却」「任意売却パンフレット」。

被災後の住宅ローンはどこに相談すればよい?
相談先は一つに絞る必要はありません。借入れ、保険、生活支援、不動産の売却では担当する窓口が異なります。次のように分けて連絡すると、確認事項を整理しやすくなります。
- 借入先の金融機関:返済猶予・返済方法変更、災害債務整理ガイドラインの手続着手について確認します。
- 市区町村の被災者支援窓口:罹災証明書、支援金、当面の住まいの確保などを相談します。
- 保険会社・代理店:風災・水災の補償、必要書類、保険金の請求方法を確認します。
- 弁護士会・法テラス:債務整理、保証人への影響、法的な相談先や利用できる援助制度を確認します。
- 住宅金融支援機構:機構の融資や災害復興住宅融資の制度を確認します。返済方法変更の具体的な手続きは、返済中の取扱金融機関が窓口です。
法テラスには災害に関する情報提供や法律相談の案内があります。無料法律相談や費用援助を利用できるかは、対象となる災害や制度、収入・資産などの条件で異なるため、最新の取扱いを確認してください。
電話でうまく説明できるか心配なときは、「台風・豪雨で被災しました。住宅ローンの支払いが難しく、返済方法の変更と、利用できる債務整理制度を相談したいです」と伝えるだけでも、相談を始められます。手元にある残高・返済額・収入の資料と、届いている通知を一緒に確認してもらいましょう。
被災と住宅ローンに関するよくある質問
Q. 被災前から滞納していたら、災害債務整理の相談はできませんか?
A. ご自身で対象外と決めずに相談してください。災害前の延滞状況などは要件の確認に関わりますが、ガイドラインには対象債権者の同意による例外もあります。以前の滞納と被災後の収入減を隠さず伝え、利用の可否と他の解決策を金融機関・弁護士に確認しましょう。
Q. ガイドラインを利用すると、信用情報にはどう記録されますか?
A. 本ガイドラインに基づく債務整理の事実や関連情報は、信用情報登録機関へ報告・登録しない取扱いです。ただし、過去の登録情報がすべて消える、新たな融資の審査に必ず通る、という意味ではありません。成立した返済計画を履行できず、登録事由が生じた場合には報告・登録されることがあります。
Q. 災害債務整理を相談したら、すぐ返済を止めてもよいですか?
A. 最初の相談だけで一律に返済が止まるわけではありません。正式な債務整理の申出後には返済・督促の一時停止という取扱いがありますが、単なる相談や手続着手の申出と混同しないことが大切です。次回返済をどうするか、いつからどの債務が対象になるかを、金融機関と専門家に確認してください。
Q. 任意売却について相談したら、家を売らなければいけませんか?
A. 相談しただけで売却義務が生じるわけではありません。支援制度、保険、返済方法変更などを確認し、住み続ける場合と売却する場合を比較します。ただし、実際に任意売却の申出書や契約書へ署名する段階では、返済継続の扱いが変わる可能性があるため、書類の意味を確認してから判断してください。
まとめ:売却の前に、使える支援と生活再建の道筋を確認
台風や豪雨で住宅ローンが払えなくなったときは、安全を確保したうえで、借入先への連絡、保険・公的支援の確認、家計の整理を進めましょう。返済猶予だけでは再建が難しい場合には、災害債務整理ガイドラインや任意売却などの選択肢を専門家と比較します。
大切なのは、被災前と同じ返済を一人で無理に続けることではなく、これからの暮らしを成り立たせることです。使える支援や手続きが分からない段階でも構いません。今の状況を伝えるところから始めてください。
本記事は2026年8月29日時点の公式情報に基づく一般的な解説です。制度の対象、支援内容、申請期限、契約上の取扱いは個別に異なります。ご自身の状況については、金融機関、自治体、保険会社、弁護士等へ確認してください。
被災後の住宅ローンについて、誰に何を相談すればよいか分からない方へ。家を売ると決める前に、返済を続ける方法と、住み替えて生活を立て直す方法を一緒に整理しましょう。
一般社団法人任意売却公正協会は、神奈川県内の住宅ローン返済に関するご相談を受け付けています。相談料は不要です。債務減免などの法的な判断は金融機関や弁護士へ確認し、公的支援の相談先も含めて解決の方向を考えます。
ご相談:0120-44-8398。神奈川県外の方も、まずは借入先の金融機関やお住まいの地域の自治体、法テラス・弁護士会へご相談ください。

大学時代に自営業を営んでいた実家が競売直前に売却することなってしまった経験から「住宅ローンについて相談する場所が必要!」と痛感し、非営利団体を設立し『住宅ローン無料相談所』を開設しています。
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