コラム
住宅ローンが払えない… 任意売却前に知っておきたい税金の話
投稿日:2024/06/27 更新日:2024/06/27
はじめに:住宅ローンが払えなくなったら…任意売却という選択肢
「住宅ローンが払えなくなったらどうしよう…」
人生の夢を叶えるマイホームも、住宅ローンの支払いが滞ってしまうと、大きな不安材料に変わってしまいます。
競売にかけられてしまうかもしれない…
住み慣れた家を出て行かなければならないかもしれない…
考えただけで心が押しつぶされそうになるかもしれません。
そんな状況に陥っても、焦ってしまい慌ててしまう前に、まずは落ち着いてください。
住宅ローンが払えなくなってしまった場合でも、解決策を探ることは可能です。
その一つの方法として、「任意売却」という選択肢があります。
任意売却とは、住宅ローンを滞納したまま、債権者の合意を得て不動産を売却する方法です。
「任意売却ってどんな方法?」
「税金はどうなるの?」
そんな疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
そこで、このコラムでは、任意売却の概要から気になる税金の話まで、具体的に解説していきます。
任意売却は、競売に比べて、
・自分の意思で売却活動を進められる
・市場価格に近い価格で売却できる可能性がある
・プライバシーを守りながら売却できる
など、多くのメリットがあります。
住宅ローンの支払いに不安を感じている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
この章では、まずは任意売却とはどのような制度なのか、基本的な部分をご説明します。
任意売却とは?
冒頭では、住宅ローンが支払えなくなった場合の選択肢の一つとして「任意売却」をご紹介しました。
しかし、「そもそも任意売却ってどんな仕組みなの?」と疑問に思われた方もいるのではないでしょうか。
そこで本章では、任意売却の仕組みや、競売との違いについて詳しく解説していきます。
任意売却を検討する上で、正しい知識を身につけることは非常に大切です。
ぜひ、この章を通して任意売却への理解を深めていきましょう。
住宅ローン残債が残っている状態での不動産売却
任意売却とは、簡単に言うと「住宅ローンが残っている状態でも、債権者(主に金融機関)の同意を得て、不動産を売却すること」です。
通常、住宅ローンを完済せずに不動産を売却することはできません。
なぜなら、住宅ローンを設定している不動産には、債権者である金融機関の「抵当権」が設定されているからです。
抵当権とは、住宅ローンの返済が滞った場合、金融機関がその不動産を差し押さえ、売却してローン残債の回収を図る権利のことです。
任意売却では、住宅ローンの返済が困難になった債務者(住宅ローンの借り手)が、債権者と交渉し、合意を得た上で不動産を売却します。
売却によって得られたお金は、まず債権者である金融機関への返済に充てられます。
そして、残ったお金があれば、債務者の手元に戻ってきます。
つまり、任意売却は、債務者、債権者双方にとって、より良い解決策となる可能性を秘めているのです。
競売とは異なる点
住宅ローンが払えなくなった場合の不動産売却には、「任意売却」以外にも「競売」という方法があります。
任意売却と競売は、どちらも住宅ローンが残っている不動産を売却する点では共通していますが、いくつかの大きな違いがあります。
区分 | 任意売却 | 競売 |
売却の主体 | 債務者(住宅ローンの借り手) | 裁判所 |
売却価格 | 市場価格に近い価格で売却できる可能性がある | 評価額を下回る価格で落札されることが多い |
売却活動 | 債務者が不動産会社と協力して行う | 裁判所が手続きを進める |
手数料 | 仲介手数料など | 売却基準価額の20%程 |
プライバシー | 守りながら売約できる | 近隣住民や職場に知られる可能性がある |
売却後の生活 | 引越し費用などの交渉が可能 | 立退きを求められる |
このように、任意売却は競売に比べて、
・債務者にとってメリットが多い
・売却価格や条件などを、債務者がある程度コントロールできる
という特徴があります。
競売は、債務者が住宅ローンの返済を怠った場合に、債権者が裁判所に申し立てを行うことで開始されます。
競売開始決定がなされると、裁判所が不動産を評価し、その評価額を元に売却が行われます。
しかし、競売では市場価格よりも低い価格で落札されることが多く、債務者にとって大きな経済的負担となる可能性があります。
また、競売の手続きはすべて裁判所によって進められるため、債務者には自分の意思で売却活動を行うことができません。
一方、任意売却は、債務者自らが不動産会社に仲介を依頼し、売却活動を行います。
そのため、市場価格に近い価格での売却を目指せるだけでなく、売却条件などを債権者と交渉することも可能です。
また、任意売却であれば、近隣住民や職場に知られることなく、プライバシーを守りながら売却を進めることができます。
住宅ローンの返済が困難になった場合は、できるだけ早く任意売却を検討することが大切です。
競売にかけられてしまう前に、専門家である不動産会社に相談することをおすすめします。
任意売却と税金:気になる疑問を解消!
任意売却を検討する際、多くの方が気になるのが「税金」の問題ではないでしょうか。
「任意売却すると、税金はどのくらいかかるのか」
「そもそも税金はかかるのか」
など、不安に感じる方もいるかもしれません。
そこで本章では、任意売却に関連する税金について、よくある疑問にお答えしながら解説していきます。
特に、多くの方が気になる「譲渡所得税」について、その仕組みや、場合によっては税金がかからないケースについても詳しく説明していきます。
任意売却は、状況によっては税金面で有利になる可能性も秘めています。
この章を読むことで、税金に対する不安を解消し、正しい知識を身につけていきましょう。
任意売却で発生する税金の種類
任意売却では、場合によってはいくつかの税金が発生する可能性があります。
主なものとしては、以下の3つが挙げられます。
①譲渡所得税
②印紙税
③登録免許税
それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 譲渡所得税
不動産を売却して利益が出た場合に課税される税金です。
任意売却の場合、売却価格が住宅ローンの残債を上回ると、利益が出たものとみなされ、譲渡所得税の対象となります。
ただし、後述するような特例や控除を利用することで、税負担を軽減できる可能性もあります。
2. 印紙税
不動産の売買契約書を作成する際に課税される税金です。
売買契約書の金額に応じて税額が決まります。
任意売却の場合でも、通常の不動産売買と同様に印紙税の支払いが義務付けられています。
3. 登録免許税
不動産の所有権を移転登記する際に課税される税金です。
不動産の固定資産税評価額を元に計算されます。
任意売却の場合でも、所有権を移転するため、登録免許税が発生します。
譲渡所得税はかかる?かからないケースとは
任意売却で発生する可能性のある税金の中で、特に気になる方が多いのが「譲渡所得税」ではないでしょうか。
「住宅ローンが残っているのに、税金まで払うとなると大変だ…」と不安に感じる方もいるかもしれません。
しかし、ご安心ください。
任意売却の場合、必ずしも譲渡所得税がかかるわけではありません。
場合によっては、譲渡所得税が課税されないケースや、税負担を軽減できる特例が存在します。
◯譲渡所得税がかかるケース
原則として、任意売却によって得た収入が、住宅ローンの残債や売却にかかった費用などを上回った場合、その利益に対して譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得 = 売却価格 – (取得費 + 売却費用) – 住宅ローン残債
◯譲渡所得税がかからないケース
・住宅ローン残債が残っている場合の特例
任意売却によって得た収入が、住宅ローンの残債に満たない場合は、譲渡所得税は課税されません。
これは、売却によって利益が出ていないと判断されるためです。
任意売却は、住宅ローンを抱えたまま売却を行うケースが多いため、この特例が適用されるケースが多く見られます。
・特別控除の活用
一定の要件を満たす住宅を売却した場合に利用できる「3,000万円の特別控除」があります。
この控除を利用することで、譲渡所得税の負担を軽減したり、場合によっては税金が0円になることもあります。
このように、任意売却における譲渡所得税は、状況によって課税されるかどうかが決まります。
ご自身の状況をしっかりと把握し、税金面についても事前に専門家に相談することをおすすめします。
税金滞納の影響と任意売却のメリット
ここまで、任意売却に関連する税金について、特に譲渡所得税を中心に解説してきました。
しかし、住宅ローンの支払いが滞っている状況では、「住宅ローン以外の税金」についても不安を感じている方もいるのではないでしょうか?
例えば、固定資産税や住民税などの滞納は、そのままにしておくと、財産の差し押さえなど、深刻な事態を招く可能性があります。
そこで本章では、税金滞納によってどのような影響が生じるのか、そして、任意売却によってどのように状況を改善できるのかについて解説していきます。
税金滞納で発生するリスク
税金は、国民の義務として定められており、決められた納期限までに納付することが求められます。
税金を滞納すると、延滞税の発生や財産の差し押さえなど、様々なリスクが伴います。
1. 延滞税
税金を滞納すると、納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、延滞税が加算されます。
延滞税の利率は、法定利率に一定の割合を上乗せしたもので、場合によっては高額になる可能性もあります。
2. 財産の差し押さえ
税金を滞納し続けると、最終的には、国税徴収法に基づき、財産の差し押さえが行われます。
差し押さえられる財産は、預貯金、給与、不動産、自動車など多岐に渡ります。
差し押さえが行われると、財産を自由に処分することができなくなり、生活に大きな支障をきたす可能性があります。
3. 競売による不動産の売却
住宅ローン以外に固定資産税などの滞納がある場合、不動産が差し押さえられると、競売にかけられてしまう可能性があります。
前述の通り、競売では市場価格よりも低い価格で落札されることが多く、多額の借金が残ってしまう可能性も少なくありません。
また、競売では、債務者の意思は反映されず、住み慣れた家を突然失うことになりかねません。
4. 財産状況などの調査
税金を滞納すると、税務署は財産状況などを調査する権利を有します。
調査の過程で、預貯金口座や給与の差し押さえ、不動産の調査などが行われる可能性もあります。
税金滞納は、経済的な負担だけでなく、精神的な負担も大きいものです。
滞納が長期化する前に、早急に対策を講じることが重要です。
任意売却で税金問題を解決できる可能性
住宅ローンの支払いが滞り、税金の滞納も抱えている場合、任意売却は有効な解決策となりえます。
任意売却によって得た売却益は、住宅ローンだけでなく、滞納している税金の支払いに充てることが可能です。
1. 税金の優先弁済
任意売却では、売却代金は主に住宅ローンの返済に充てられますが、債権者との交渉次第で、滞納税金の支払いを優先することも可能です。
金融機関は、債務者の経済的な立て直しを重視するため、ローン残債の返済計画と合わせて、税金滞納の状況も考慮しながら、支払いの優先順位について相談してみましょう。
2. 財産の差し押さえ回避
任意売却は、債権者の合意を得て行うため、税金の滞納によって財産の差し押さえを受けるリスクを回避できる可能性があります。
任意売却によって、滞納している税金を一括で支払うことができれば、差し押さえを回避できるだけでなく、延滞税の増加も抑えられます。
3. 専門家のサポート
任意売却は、不動産売買や税金に関する専門知識が必要となる複雑な手続きです。
そのため、不動産会社や弁護士、税理士などの専門家に相談し、サポートを受けることが重要になります。
専門家は、債権者との交渉や税金問題の解決などをサポートし、円滑な任意売却を支援してくれます。
任意売却は、税金問題を解決するだけでなく、新たなスタートを切るための有効な手段となりえます。
税金滞納で悩んでいる方は、一人で抱え込まず、専門家に相談することをおすすめします。
任意売却を検討する上での注意点
任意売却は、住宅ローンの負担を軽減し、新たなスタートを切るための有効な手段となりえます。
しかし、任意売却は複雑な手続きを伴い、注意すべき点もいくつかあります。
そこで本章では、任意売却を検討する際に、特に注意が必要となるポイントについて解説していきます。
事前に注意点やリスクを理解しておくことで、よりスムーズかつ有利に任意売却を進めることができるでしょう。
専門家のサポートの重要性
任意売却は、不動産売買や法律、税金など、専門的な知識が求められる複雑な手続きです。
そのため、債務者だけで手続きを進めることは非常に困難であり、専門家のサポートを受けることが不可欠と言えるでしょう。
任意売却をサポートしてくれる専門家
・不動産会社
任意売却に精通した不動産会社は、物件の査定から売却活動、債権者との交渉まで、一貫してサポートしてくれます。
特に、任意売却の実績が豊富で、金融機関との交渉経験が豊富な不動産会社を選ぶことが重要です。
・弁護士や司法書士、税理士
任意売却に関して、法的知識と資格を持つ弁護士や司法書士、また税金問題について精通している税理士は心強い存在です。
しかし、任意売却は不動産取引であるため、必ずしも彼らが最適な選択とは限りません。
弁護士や司法書士は法律の専門家であり、税理士は税金の専門家であるため、不動産査定や販売活動は行えません。
そのため、任意売却売却は、彼らと提携している任意売却に精通した不動産会社に依頼することが適切だと言えるでしょう。
また、弁護士に依頼すると費用が高額になる場合もあるため、費用対効果を考慮する必要があります。
専門家を選ぶ際のポイント
・任意売却の実績が豊富であること
・金融機関との交渉経験が豊富であること
・債務者の立場に立って親身になって相談に乗ってくれること
・費用体系が明確であること
任意売却は、専門家のサポートを受けることで、スムーズかつ有利に進めることができます。
信頼できる専門家を見つけ、早めに行動を起こすことが重要です。
まとめ:任意売却で新たなスタートを!
住宅ローンが支払えなくなることは、決して珍しいことではありません。
様々な事情で、多くの方が住宅ローンの支払いに苦しんでいます。
しかし、だからといって、未来まで諦めてしまう必要はありません。
任意売却は、住宅ローンを抱えたまま住宅を手放す方法の一つであり、競売よりも多くのメリットがあります。
場合によっては、税金負担を軽減できる可能性もあり、専門家のサポートを受けることで、よりスムーズかつ有利に手続きを進めることができます。
住宅ローンの支払いが困難な状況でも、任意売却という選択肢があることを覚えておきましょう。
一人で悩まず、まずは専門家に相談し、状況に合った最善の道を見つけてください。
任意売却をきっかけに、新たなスタートを切りましょう。
このコラムが、住宅ローンや税金の問題で悩んでいる方にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。
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